声の心理学その6~抑揚

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声について心理学的な側面から分析したこのシリーズも、ひとまず最後の章です。

声の印象を左右するポイント、最後は「抑揚」。

ずっと同じ調子で話されると、どうも聞く気が起きない、というのはよくある話。学生の頃、睡魔と戦うことが多かった特定科目の授業に共通する先生の特徴は「メリハリのなさ」も要因の一つだったんだなぁと思いだします。

どこがポイントか、分かりにくい。

知識ばかりで自身の感情などの話がない(これによって、話し手自身も感情の起伏無くトークするため、必然的に話に抑揚が生まれにくくなります)。

起承転結が不明確。

以前もこのブログに記したことですが、ナレーターとして有名な方々は、「自分が心から思えば、伝わる」という思いを抱いていらっしゃることが多いです。かくいう私も、そう思う人間の一人。

本音は、伝わるのです。そして、タテマエは伝わりにくい。だって、その人の体験ではないことが多いから。

心理学者であり言語学者でもあるポール・グライスが、4つの『会話の公理』というものをまとめています。オバマ流スピーチも、このグライスの公理をもとにしているのだとか。それはどういったものかというと、

1、質の公理・・・信じていないことを言わない。根拠のないことを言わない。(本音でトーク!ということですね。)

2、量の公理・・・求められている「だけ」の情報を与えよ。求められている「以上」の情報を加えないこと。

3、関連性の公理・・・関係のないことは言わない。

4、様式の公理・・・分かりやすい表現を使うこと。曖昧な表現は避け、順序立てて簡潔な言葉で話すこと。

以上が4つのグライスの公理です。これを守っていると、先述したように「本音」ですから、話し手自身の感情も乗りやすく、トークに自然と抑揚が生まれるはず。

そして、長年「喋り手」をさせていただいている私から僭越ながら申し上げますと、言葉と言葉の間が空いてしまったとしても、その「間」にも、意味があるのだから怖がらないでほしい、ということです。話している途中で、ちょっと自分なりの言葉を探す「間」。話している途中で、自分の感情を整理するための、伝えるための「間」。この「間」の次の言葉は、…独特の喋り手表現かもしれませんが、言葉が、立ちます。間の次は、言葉が引き立つ。

この「間」を、人間臭く、自分らしく、素直に隠さずトークに取り入れることで、結果的に抑揚もより魅力的に生み出されるのではないでしょうか。間は、言葉以上に言葉らしく何かを表現することだってあるのですから。

 

声というのは、大変奥深いものです。

言葉以上に、声は感情を伝えることもあります。あなたの声が、あなたらしさを魅力的に表現する最大の味方となりますように!