可聴音域

23874870_s今回はちょっと真面目に「ナレーション」を語ります。

可聴音域。人間が、音として聞き取れる周波数はおおよそ20ヘルツから2万ヘルツと言われていますよね。

人間の声は、(クリス・グレンさんのような!)超低音ボイスの80ヘルツから、ソプラノの高音域でも1200ヘルツだといいますから、人間は、人が口から発する音=話す声をすべて聞き取ることができるという原則になります。

一方で、長年「声」の仕事をさせていただいてきて思うのは、「人には、耳にして『心地よい音域』が存在する」、ということ。さらにもう一歩踏み込んで申し上げるなら、その心地よい音域は生活の時間帯や活動、状況によって変わるということ。また、人が話す中でひとつの単語内や短い文章内であれば、3つ以上の音階が変化すると不快感を覚える傾向にあるということです。

逆に、それをすることによって注意を引く、という手もあるのは事実。突然の音の変化を効果的に行い、最も伝えたい言葉を際立たせる手法です。(人気曲の「うっせーうっせーうっせーわ」、のメロディラインはまさにそれ。突然の音域変化は、攻撃的なメッセージを載せるのにも有効です。)

「ナレーター」という仕事をする人間は、そういった「聞く人に心地よい音域、音階変化、キーとなる単語のインパクトの強弱」について、放送される時間にふさわしいものとして都度都度最善と思われるものだと判断しながら、これらを効果的に意識して行っているから、プロなのではないでしょうか。(たまに無意識でできちゃってる天才さんもいますが笑))

アクセントが正しい、正しい日本語である、正しい文節でブレスをしている、などは初歩の初歩。それはナレーターの、いわばインフラ。そこに何を構築していくか。ディレクターさんたちが製作された大切なVTRをいかに、生かすよう全力を尽くすことができるか。そこにこそ、ナレーターの妙味があります。

これまで、「不況下でナレーションのお仕事を続けるなんてすごいですねー」と言っていただくことがありました。(「しかも女性で」という言葉が続くことも多いです。)本当に、ありがたいことだと思います。アナウンサーさんではなく、ナレーターとしての、私の仕事を求めてくださったことが。

1億人以上が「日本語」を話している。その中で「日本語を話す」ことが仕事である、そのことの意味を思うのです。

 

「なぜ、このナレーターを選ぶのか」。

そこを、もしもお仕事をくださる方が、たとえ「なんとなく良いと思ったから」という、直感的なセンス・感性で選んでくださったとしても、「なぜならば」の答えをナレーター自身、つまり私自身が持っていなくてはならないと思うと同時に、より明確に答えを浮き彫りにできるよう、一回一回のお仕事に全力で向き合っていきたいと思っています。

普段、なかなか仕事場では自分を「選ぶ価値」をひけらかすのが下手な私です。(いや、みんなしないか、そんなことは笑)なので、ちょっとたまには、「プロとして」の考え方の一部分をブログに綴ってみました。

 

どんな職種でも、凛として活躍していらっしゃる「プロ」に敬意をこめて。私もそうでありたいとの気持ちを込めて。