時代小説が大好きです。
毎日1~2冊程度読んでいるのですが、最近読んでいるのは、上田秀人著作、水城聡四郎シリーズ。ちょうど昨晩は、吉宗公より御広敷用人に抜擢された聡四郎が、大奥の嫌がらせに負けじと、茶会を遂行させるところ。
吉宗公といえば、徳川幕府の中興の祖であり、暴れん坊将軍としておなじみ。小説の中では、暴れん坊将軍のような気さくな雰囲気ではなく、豪快でありながら策略家。
大奥の粛正を図ったことは史実として有名ですが、小説の中ではこんなやり方が面白く描かれていました。
1、美女を何人でもいい、見繕って名を挙げてほしい、と吉宗公が大奥中臈に依頼。
2、大奥中臈は、「きっと側室を選ぶんだわ!」と、見目麗しい女性を何十人も挙げた。
3、吉宗は、「じゃあ、その美女たちを全員大奥から出すように。だって美女なら、いくらでもお嫁に行けるだろうから」と。
大奥中臈型の思惑の裏をかいた、痛快なエピソードでもあるのですが、なんと、これが実話らしい!
吉宗公の策略家っぷりは、小説の中でも生き生きと魅力的です!
このエピソードで、吉宗公が行った大奥の操り方。これは、心理学で「フォールス・コンセンサス効果」といいます。
要するに、自分の考え方が普通=相手も自分と同じ考え方だろう、と思い込んでしまう心理現象。そう、人は、多くの人が自分と同じ意見や行動をするに違いない、という潜在意識を常に持って生きているのです。
吉宗公は、見目麗しい女性を、どうしたいか、という結果を口にすることなく中臈に名前を挙げるよう依頼。中臈は、「今までの将軍がそうであったように、また男性というのは美しい女性が大好きなのだから、吉宗公もきっと…」と、敢えて、名を挙げる目的は何か?という質問を吉宗公にしませんでした。これが、フォールスコンセンサス効果。吉宗公はそれを逆手にとって利用したわけですね!
武芸がなりを潜め、算術に長けたものが重宝されるようになっていた武家社会。人の心を裏も表も使いながら上手に操り、自分の思う結果を導いていく。もしかしたら、現代よりもずっと「心理学」を有効に使っていた時代だったのかもしれませんね。